Finaleの開発・販売終了の詳細
Finale(フィナーレ)は、33年間にわたって楽譜作成のスタンダードとして多くの音楽家に愛されてきましたが、2024年8月26日にMakeMusic社が突然開発と販売の終了を発表しました。僕はPrintMusic(プリントミュージック)からFinaleにバージョンアップし、長い間利用してきましたが、技術の進化に伴い、Finaleのソフトウェアは非常に複雑になり、新しい機能の追加が難しくなったため、開発・販売の終了が決まったようです。現在のOSを変更しなければ、インストール済みのPCでは引き続き利用可能ですが、2025年8月以降は新たに認証や再認証ができなくなる見込みです。また、テクニカルサポートも終了するとのアナウンスがありました。
MakeMusic社からの公式メールの内容
<本メールは重要なご案内のため、MUSIC EcoSystemsにMakeMusic製品をご登録頂いている全ての方へお届けしております>
拝啓 MakeMusic製品ご登録ユーザー様各位
平素よりMakeMusic製品をご愛顧頂き、誠に有難うございます。楽譜作成ソフトウェアFinaleの開発/販売元であるMakeMusic社は、米国時間2024年8月26日にFinaleの開発/販売終了をアナウンスしました。日本において、約33年に渡りFinale及び関連製品をご愛顧賜りましたこと、心より御礼申し上げます。
今回の発表は、ジェネレックジャパンにとりましても突然のことであり、深く遺憾の意を表します。この度のMakeMusicによるFinaleの開発および販売の終了は、同時に弊社との国内販売代理店契約の即日終了を余儀なくされています。そして、Finaleおよび関連製品の販売、配布、サポート、WEBサイト、PRやロゴ使用などのすべての活動も、即日終了せざるを得ない状況であることをお伝えさせて頂きます。
今回のアナウンスによる日本のFinaleユーザーの皆様からのご心配のお言葉を受けまして、契約終了により即日終了せざるを得ない状況ではございますが、できる限り年内はサポート対応をさせていただく所存でございますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。このFinaleの開発/販売終了に関するMakeMusic社のWebページで発表されておりますGreg Dell’Era社長のユーザー向けレターの内容および今後の日本での対応に関しましてご案内します。
www.mi7.co.jp/products/finale
皆様にはご不便をおかけいたしますことをお詫び申し上げますとともに、引き続き弊社製品をご愛顧賜りますようお願い申し上げます。
敬具
2024年8月28日
株式会社ジェネレックジャパン
Doricoへの移行推奨
Finaleの開発が終了した現在、MakeMusic社はSteinberg社のDoricoへの移行を推奨しています。Doricoは最新の技術を駆使し、使いやすさに優れた楽譜作成ソフトウェアです。Dorico Proに移行する際には特別割引が提供され、Steinberg社がしっかりとサポートを行ってくれるようです。Dorico Proは通常579ドルのところ、特別価格の149ドルで購入できます。
Finaleユーザーへの影響
Finaleユーザーにとって、この突然のニュースは精神的より肉体的な大きなダメージが大きいような気がします。(今ある膨大な譜面を整理しないといけません。)ただジェネレックジャパンが年内のサポートを約束しているので移行に対する不安は少し和らぐかもしれませんが、それでも、サポート終了後の対応についての心配は尽きません。特に、多くの音楽家が利用しているFinaleのファイルがDoricoで開けないのは重大な問題かと思います。
DoricoとFinaleの違い
ユーザーインターフェースと操作性
- Dorico:直感的なインターフェースで、シンプルかつ視覚的に分かりやすいです。自動配置機能により、楽譜の要素が自動的に整えられるので、手動での調整がほとんど不要です。
- Finale:高いカスタマイズ性を持ち、多くの詳細設定が可能ですが、操作が複雑で習熟には時間がかかることがあります。操作の自由度は高いものの、やや複雑です。
楽譜作成と編集機能
- Dorico:楽譜の配置が自動的に最適化され、見やすい譜面が作成されます。音楽理論に基づく高度な機能も備えており、複雑な楽曲も効率よく作成できます。
- Finale:各要素を細かく調整できるため、完全なカスタマイズが可能です。ただし、自動配置機能が限られており、手動でのレイアウト調整が必要になることが多いです。
音楽再生とオーディオ機能
- Dorico:高品質な音楽再生が可能で、音色やアーティキュレーションの設定も細かく調整できます。リアルタイムでの再生と迅速な音楽のフィードバックが得られます。
- Finale:音色やアーティキュレーションの設定は手動で行われることが多く、標準的な音源ライブラリが提供されています。音質を向上させるためには、外部のVSTプラグインの利用が必要です。
互換性とデータ管理
- Dorico:MusicXMLやMIDIファイルとの互換性があり、他のソフトウェアとのデータ交換がスムーズです。また、自動保存機能があり、作業内容の喪失を防ぐことができます。
- Finale:MusicXMLやMIDIファイルのインポートやエクスポートが可能で、広範な互換性を提供しますが、データのバックアップは手動で行うことが一般的です。
価格とライセンス
- Dorico:「Dorico Pro」「Dorico Elements」「Dorico SE」など、複数のバージョンがあり、それぞれ価格と機能が異なります。サブスクリプションではなく、一回購入のライセンス体系です。
- Finale:「Finale」「PrintMusic」「NotePad」などのバージョンがあり、それぞれ異なる価格帯と機能を提供しています。一回購入とサブスクリプションの選択肢があります。
サポートとコミュニティ
- Dorico:オンラインチュートリアルや公式サポートが充実しており、公式フォーラムで情報交換やサポートが受けられます。
- Finale:FAQやユーザーガイドが提供されており、フォーラムでユーザー同士の情報交換が可能です。
FinaleからDoricoへの移行における課題
- 機能の違い:Finaleの特定機能やカスタマイズがDoricoでは同じように実現できない場合があります。
- 楽譜のデータ移行:MusicXMLやMIDI形式でのデータ交換が可能ですが、完全な互換性が保証されないことがあります。譜面のレイアウトやフォーマットの調整が必要になることもあります。
- 学習コスト:Doricoの操作方法や機能に慣れるまでの時間と努力が必要です。
- 既存のテンプレートやスタイル:Finaleで作成したテンプレートやスタイルをDoricoで再作成する必要があるかもしれません。
- プラグインと追加機能:Finaleで使用していたプラグインがDoricoには存在しない場合があります。
Finale以外の譜面制作ソフトの選択肢
Finale以外にもさまざまな譜面制作ソフトがあります。それぞれのソフトには独自の特徴と利点があり、用途やニーズに応じて選ぶことができます。以下は、主要な譜面制作ソフトのいくつかの選択肢とその特徴です。
Dorico|ドリコ
Steinberg社が提供する最新の楽譜作成ソフトウェアです。このソフトは、直感的なインターフェースと自動配置機能を特徴としており、楽譜のレイアウトが簡単に整います。また、音符の入力が柔軟で、複雑な作曲プロセスにも対応しています。
楽譜作成ソフトウェア – Dorico | Steinberg
https://www.steinberg.net/ja/dorico/
Sibelius|シベリウス
Avid社が提供するプロフェッショナル向けの楽譜作成ソフトで、大規模な楽譜プロジェクトにも対応できます。高い機能性を持ち、音楽制作のワークフローを効率化するツールとして広く利用されています。特にMIDI入力やリアルタイムプレビュー機能が評価されています。
Sibelius Ultimate
https://sibelius.rygasound.com/products/sibelius
MuseScore|ミューズスコア
無料で利用できるオープンソースの楽譜作成ソフトです。コストをかけずに楽譜を作成したいユーザーにとって、シンプルなインターフェースと活発なコミュニティが魅力です。これにより、初心者でも扱いやすく、サポートも豊富です。
無料の作曲・楽譜作成ソフト | MuseScore
https://musescore.org/ja
楽譜の必要性と現代の音楽制作
現代の音楽制作では、DTM(デスクトップミュージック)の普及により、楽譜を使わずに音楽を作るケースが増えています。特にエレクトロニック・ダス・ミュージック(EDM)やポップスでは、デジタルオーディオワークステーション(DAW)を使って音を直接操作し、作曲するのが一般的です。このような環境では、楽譜なしで音楽を作ることが可能で、楽譜の重要性が見過ごされがちです。
しかし、クラシック音楽やジャズ、そしてライブ演奏などでは、楽譜は依然として欠かせないツールです。楽譜は作曲家の意図を正確に伝えるための重要な手段であり、演奏者がその意図を理解し再現するために必要です。特に演奏家にとっては、楽譜が音楽の基盤であり、演奏技術の習得にも不可欠です。
楽譜が持つ情報の価値
さらに、楽譜には音楽の構造や和声進行、フレーズのニュアンスを把握するための重要な情報が含まれています。楽譜を通じて独自の演奏技術を身につけることができ、音楽の「共通言語」として異なる文化や時代を超えて音楽を共有する手助けとなります。音楽制作における楽譜の役割はジャンルや作業のスタイルによって異なりますが、その価値が今もなお重要であることを忘れてはいけません。
藤沢遼の結論 / 要点整理
MakeMusic社によるFinaleの開発・販売終了により、今後の音楽制作ツールの選択が重要になります。Finaleの終了は受講生のレッスンに影響を与える可能性があり、新しいソフトウェアを選ばなければなりません。ただし、現在インストール済みのパソコンではFinaleが引き続き起動するため、当面は壊れないように使用するしかないかもしれません。
藤沢遼のエッセンス
Dorico、MuseScore、Sibeliusなどの代替ソフトを検討し、それぞれの特徴を理解した上で、自分の音楽制作スタイルや受講生のニーズに最も合ったツールを選ぶことが求められます。これからもピアノ&DTM、パソコンのレッスンを続けたいと思っています。